【国税専門官(A区分)】専門記述の形式(文字数や時間等)
- 解答時間は1時間20分
- 字数は指定なし。
- 憲法、民法、経済学、会計学、社会学の5つの科目から1科目を選んで解答
国税専門官(A区分)の専門記述試験は上記のような形式で実施されています。
【国税専門官(A区分)】民法 専門記述テーマ・過去問
【2023年】
次の事例を読み、設問に答えなさい。
[事例]
令和 4 年 4 月 1 日、Aは、建設業者Bとの間で、A所有の土地上に建物甲を建築することを5,000 万円でBに請け負わせる契約(以下「本件元請契約」という。)を締結した。同月 5 日、Bは、Aの承諾を得ずに、建設業者Cとの間で、甲の建築工事を 4,000 万円でCに一括して請け負わせる契約(以下「本件下請契約」という。)を締結した。
本件元請契約には、「注文者は工事中契約を解除することができ、その場合の出来形部分は注文者の所有とする。」との特約があったが、本件下請契約には、出来形部分の所有権の帰属に関する特約はなかった。
Cは、全ての材料を自ら提供して甲の建築工事を行っていたところ、甲の約 3 割が出来上がったところでBが倒産した。Bが倒産した時点で、Aは、Bとの約定に基づき報酬の大半をBに支払済みであったが、Bは、Cに対し、報酬を全く支払っていなかった。Aは、同年 8 月 1 日、本件元請契約を解除した上でCに工事の中止を求め、Cは工事を中止した。その後、Aは、別の建設業者Dとの間で、出来形部分を基に甲を完成させる旨の請負契約を締結し、Dは材料を自ら提供して甲を完成させた。同年 12 月 1 日、Aは、Dから甲の引渡しを受け、A名義で甲の所有権保存登記をした。同月 15 日、Cは、甲の所有権は自己にあるとして、Aに対し甲の明渡しを請求した。
[設問]
この場合、Cの請求が認められるかについて、A及びCの主張を踏まえつつ、論じなさい。
【2022年】
次の問いに答えなさい。 なお, (1)及び(2)は, それぞれ独立した問いであり, 相互に関連しないものとする。
(1) AはBに500万円を貸したが, BがAに500万円を弁済しないまま, 弁済期から11年が経 過した後, Bは, Aから500万円を借りていたことを思い出し、「今は手元にお金がないため、500万円の弁済はもうしばらく待ってほしい」という手紙をAに送った。 しばらくした後, Aが Bに対し 500 万円の弁済を求めたところ, Aの金銭債権の消滅時効が完成していることを知っ たBは,Aの金銭債権は時効消滅しており,自身に500万円を弁済する義務はないと主張している。
この場合, AのBに対する請求が認められるかについて論じなさい。
(2)Aは,Bに500万円を貸した際に、この500万円の金銭債権を担保するため,Cとの間で連 帯保証契約を結んだ。 その後, BがAに500万円を弁済しないまま, 弁済期から7年が経過し た。 一向にBからの弁済がないため, AがCに対し500万円の弁済を求めたところ, Cは, A のBに対する金銭債権は時効消滅しており、 自身に500万円を弁済する義務はないと主張して いる。 なお, Aは, 弁済期が到来した際,そのことを認識していたが, 弁済期から7年が経過 するまで, Bに対し一度も弁済の請求等をしていない。
この場合, AのCに対する請求が認められるかについて論じなさい。
【2021年】
次の事例を読み,以下の問いに答えなさい。ただし,自動車損害賠償保障法上の責任については論じなくてよい。
[事例]
医薬品の販売等を業とするA会社の従業員Bは,退社後,会社近くの映画館に友人と映画鑑賞に出掛けた。映画鑑賞後,友人を自宅まで送り届けるため,Bは,私用に使うことが禁止されているAの社用車を利用しようと考えた。Aでは,社用車の鍵は金庫等には保管されておらず,誰でも自由に持ち出すことができた。Bは,社用車に乗って友人を送り届けた後,そのまま社用車を運転して自らも帰宅の途についたが,その道中,Cの運転する車と衝突事故を起こし,Cは全治 2 か月の重傷を負った。事故の際,Bは居眠りをしており,また,Cはカーナビの操作に気を取られて前方をよく見ていなかった。
⑴ CはBに対し,どのような請求をすることができるか。Bの反論も踏まえて論じなさい。
⑵ CはAに対し,どのような請求をすることができるか。Aの反論も踏まえて論じなさい。
⑶ ⑵でCの請求が認められた場合,AはBに対し,どのような請求をすることができるか。Bの反論も踏まえて論じなさい。
【2020年】
XはYに対して貸金債権を有しており、 当該債権を被担保債権として,Yの所有する宅地及び その上に存在する建物について抵当権の設定を受け、 その旨の登記も完了した。 このことを前提に, 次の問いに答えなさい。 なお,(1)と(2)は,それぞれ独立した問いであり, 相互に関連しないものと
する。
(1) Yは, 抵当権設定前から取り外し可能な庭石を本件宅地に設置していた。 当該抵当権設定登記 後,Yは,Aとの間で当該庭石を譲渡する契約を締結し, Aは, この契約に基づき, 当該庭石を 搬出しようとしている。 この場合, Xは, A に対し、当該庭石の搬出をやめるよう請求すること ができるかについて論じなさい。
(2) Yによる抵当権設定登記後, Bが権原なく本件建物の占有を開始した。 Yが弁済期の到来後も 債務を履行しないため, Xは抵当権の実行として本件宅地及び本件建物の競売を申し立てたが Bが本件建物を占有しているため買受けを申し出る者がいなかった。 この場合, Xは, Bに対し, どのような請求を行うことができるか。 考えられるものを一つ挙げ, その内容と可否について論 じなさい。 ただし, 損害賠償については論じなくてよい。
【2019年】
次の事例を読み, 以下の問いに答えなさい。
[事例]
Xは,Yとの間で,自己が所有するマンション一戸 (以下「甲」という。)をYに賃貸する旨の契約 (以下「本件契約」という。) を締結し, 甲を引き渡した。 本件契約では, 賃料は月額10万円, 賃貸 期間は2年間, 目的は居住目的と定められた。
Xは,本件契約を締結するに当たって, Yに対し, 転貸をすることを禁ずる旨を告げ, 契約書に もその旨が明記されていた。 他方で, Yは, Xに対し, 実家で単身で暮らしている母親を介護のた め呼び寄せて同居する可能性があることを告げ, Xはこれを了承した。
Yの叔母であるZは, 英会話スクールの開業を考えていたところ, 立地・間取りともに適切で あった甲に興味を持ったため、 「賃料は月額12万円を支払うので、 甲を英会話スクールに利用さ せてほしい。あなたの母親の介護は私の娘に任せればよい。」 とYに頼み込み, YはXに無断でこれ を了承した。
現在,Yは甲とは別のマンションに居住しており, 乙は、甲に単身で居住しながら, 甲の一室を 用いて英会話スクールを営業している。
(1) Xは,Yに対し, 本件契約を解除し, 賃貸借契約の終了に基づく甲の返還請求をしようと考えている。 Xの当該請求の可否について論じなさい。
(2) 仮に, (1)の主張が認められない場合,
Xは, Zに対して, 直接賃料を請求することができるか について論じなさい。 また, かかる請求をすることができるとした場合, その金額はいくらかに
ついても論じなさい。
【2018年】
次の事例を読み, 以下の問いに答えなさい。 なお, (1)と(2)は, それぞれ独立した問いであり, 相
互に関連しないものとする。
[事例]
平成29年5月4日, Xは, Aから土地甲を無償で譲り受けた際に, 贈与契約を原因とする甲の 所有権移転登記手続に関する事務を友人であるYに委任した。 このため, Yは, Xの実印, 印鑑証 明書,甲の権利証を所持・管理することとなった。 その後、 自己の事業が不振で生活にも窮するよ うになったYは,平成29年7月10日, Xの実印を無断で利用して契約書を作成し, 印鑑証明書 を提示した上で,自己をXの代理人として, X所有の甲を5,000万円でZに売り渡した。
乙は、甲にマンションを建築して賃貸経営を行うことを予定しており, 平成29年7月20日, 甲の土質調査や測量を業者に依頼して行い,総額で200万円の費用を支出していた。 なお,Zは, Yが甲についての本件売買契約に係る代理権を有していないことを知らなかった。
(1)Zは, Xに対し, どのような請求をすることができるかを論じなさい。
(2)Zは,Yに対し, どのような請求をすることができるか。 Zの請求に対するYの反論も含めて 論じなさい。
【2017年】
次の事例に関する [設問1] 及び [設問2] に答えなさい。 なお, [設問1] 及び [設問2] において付加された事実は, 相互に関連しないものとする。
[事例]
平成2年5月1日, Xは, A所有の甲土地を買い受け, 所有権移転登記を備えないまま甲の古 有を継続していたところ, 平成4年9月1日, Aは死亡し, その子Bが, 相続により甲に関する 所有権を取得し, 移転登記を了した。 Xは甲を買い受けた時点で善意無過失であった。
[設問1]
Bは,平成11年12月1日, Yに対し甲を売り渡し、 同日所有権移転登記を了した。 Xは, 移 転登記がYに備えられていることに気付き、 平成12年6月1日, Yに対し, 甲の所有権に基づき, 甲の登記名義をX に移すよう求める訴えを提起した。
い。
この場合, Xの請求は認められるか。 取得時効と登記に関する判例法理に触れながら, 論じなさ
[設問2]
Bは,平成17年3月1日, Zに対する債務を担保するため, 甲に抵当権を設定し、 同日設定登 記を了した。 Xは, 抵当権設定登記の時点では,抵当権設定の事実を知らず, 甲の所有について普 意無過失であった。 その後、 平成29年4月1日, Zが抵当権の実行として甲の競売手続を申し立 て, 甲が差し押さえられた。 Xは、 自己に甲の所有権があることを主張して, Zに対し第三者異議 の訴えを提起した。
この場合,Xの請求は認められるか。 なお, 解答に際しては民法上の問題点についてのみ論じれ ばよく、 民事執行法上の問題点を論じる必要はない。
(参考) 民法
(抵当不動産の時効取得による抵当権の消滅)
第397条 債務者又は抵当権設定者でない者が抵当不動産について取得時効に必要な要件を具備 する占有をしたときは, 抵当権は,これによって消滅する。
(参考) 民事執行法
(第三者異議の訴え)
第38条 強制執行の目的物について所有権その他目的物の譲渡又は引渡しを妨げる権利を有する第三者は、 債権者に対し, その強制執行の不許を求めるために, 第三者異議の訴えを提起することができる。
(第2項以下略)
【2016年】
次の事例を読み, 設問に答えなさい。
[事例]
平成27年1月10日, Yは, Aとの間で, 工事完成期日を平成27年6月10日とし, Y所有 の土地上にAが甲建物を建設する旨の請負契約(以下「本件請負契約」という。)を締結した。 本件講 負契約においては,Aは,請負代金の一部を受領するとともに, 工事が完成した時に残代金を受領 することとされていた。 平成27年4月30日, Aは、請負代金債権のうち, 工事完成時に支払わ れる分をXに譲渡し, Yはこれに対して異議をとどめない承諾をした。 その後, Aは, 工事が全体 の約6割に達したところで, 工事を中止し, そのまま放置した。 そこで, 平成27年6月30日, YはAの債務不履行を理由に本件請負契約を解除した。
ところが,本件請負契約の解除後,X,Yに対して, 譲り受けた請負代金債権の支払を求めて
きた。
[設問]
Xが,Yに対して, 譲り受けた請負代金債権の支払を求めることは可能か。 以下のXの主張の当否を論じつつ, Yへの支払請求の可否について論じなさい。
【Xの主張】
私は、請負代金債権をAから譲り受けているのだから, Yから支払を受ける権利がある。 確かに、 当該債権が将来完成されるべき未完成工事部分の請負報酬金債権であることは知っていた。 しかし、 Yは,当該債権が譲渡された際, 異議をとどめない承諾をしているのだから、 私が知っていたか否 かは関係がない。 また, Yは債務不履行を理由に本件請負契約を解除しているが, Yが異議をとど めない承諾をした後に債務不履行が生じている以上, そもそもYは,私に対して,本件請負契約の 解除を主張することはできないと考える。
【2015年】
次の事例を読み、 設問に答えなさい。
[事例]
Aは高級住宅地に所在する土地(以下「本件土地」という。)を所有していたが、既に近隣に自宅を所有していたことから,その使い道に困っていた。 その折、 友人Bが自宅を建てるために土地を探 していることを耳にしたため, Aが本件土地の買取りを持ちかけたところ, Bは是非とも購入した いとして,これに応じた。 そこで, A及びBは, Aが本件土地を住宅建設用地として1億円でBに 売却することを内容とする売買契約(以下「本件売買契約1」という。)を締結し, AはBに対して本 件土地を引き渡すとともに, Bから売買代金として1億円を受領した。
もっとも、数日してBは,本件土地は日当たりが良くないように思えたことから,Cに対して, 本件土地を住宅建設用地として1億円で転売(以下「本件売買契約2」という。)した。 この頃, Bは, ギャンブルにのめり込んでおり、 売買代金としてCから受領した1億円をすぐに消してしまい, 現在に至るまで無資力状態に陥っている。
その後、しばらくして, Cが自宅建設のために本件土地の土壌調査を行ったところ、 Aの所有当 時から本件土地の地中には大量の有毒物質が不法投棄されており、 現状のままでは住宅の建設用地 とすることは不可能であって、 住宅を建設できる状態にするには多額の費用がかかることが判明し
た。
[設問]
CがAに対して、売買代金相当額である1億円の支払を求めることは可能か。 以下のB及びCの主張を前提として, Aへの支払請求の法律上の根拠及び当該請求の可否について論じなさい。
【Bの主張】
「本件売買契約1の締結当時, 本件土地に有毒物質が埋まっていることを私が知っていたら, A から本件土地を購入することはなかっただろう。 住宅建設用地の売買として売買契約を結んだのだ から、私もAも汚染された土地ではないことを前提としていたし、 実際に契約書にもそう書いてあ る。また、本件売買契約2の締結当時, Cも私と同じように住宅建設用地として本件土地を買った ということは、私も分かっていたし、契約書にも住宅建設用地の売買だと書いてある。この時点に おいても,私は,本件土地に有毒物質が埋まっていることは知らなかった。 Cも気の毒だとは思う が,私としては、今更この話を蒸し返してAとの関係を悪くしたくない。」
【Cの主張】
「本件土地を私に売った本人であるBが無資力である以上、何とかAに売買代金相当額である1 億円を支払ってもらいたい。 私は住宅を建設するために本件土地を購入したのだから、 有毒物質が 埋まっていることを知っていれば,本件土地は買わなかった。 そのような事情がある以上、本件売 買契約2は錯誤で無効になるのではないのか。 Bとしても本件売買契約 1の締結当時, 有毒物質が 埋まっていることを知っていれば,本件土地を買わなかっただろうから、 本件売買契約1も同様に 錯誤により無効だと思う。 本件売買契約1と2の両契約の錯誤を理由に, Aに売買代金相当額であ る1億円の支払を求めることはできないか。 Bに対して私が支払った売買代金相当額である1億円 Aが支払ってくれるのであれば, Aに対して本件土地を返還するのは構わないし、 他に何か損害 の賠償を求めようとも思っていない。」
【2014年】
次の事例における, AC間及びBC間の法律関係を論じなさい。
(事例)
Aの子であるB (8歳児) は、 通りすがりのCを故意にカッターで切りつけ, 切り傷を負わせた。 Bは以前から, カッターを振り回して他人を危険にさらす行為を度々行っていたが, Aは,そのこ とを把握しながらも, Bに特段の注意をすることもなければ, カッターを取り上げることもしなかった。 Cの症状は, Cが出血の止まらなくなる持病を患っていたことにより悪化し, Cは長期間の入院を余儀なくされた。
【2013年】
以下の[設問1] 及び [設問2] について答えなさい。
[ 設問1] Aは, 甲土地を所有しているが, 平成23年1月10日, B, Cとの間で甲土地をCに売 却する売買契約(以下「本件売買契約」という。)を締結した。 しかし, Aとしては, Cには甲土地 を売却したくないと考えている。 以下の(1)及び(2)の事実関係の下,Aは民法上どのような主張を することが考えられるか,また, そのAの主張は認められるかについて論じなさい。 ただし, (1) と(2)はそれぞれ独立したものであり, 相互に関連しないものとする。
(1) Bは, 長年Aの使用人として働いており, Cは頻繁にBを通じてAと取引をしていた。 Aは平成22年3月10日に甲土地の売却に関する代理権をBに与えたが, 平成22年12月25日に Bを解雇し, 甲土地の売却に関する代理権も取り消した。 Cはその事情を知らずに,Aの代理 人と称するBを通じ, 本件売買契約を締結した。
(2) Bは,本件売買契約締結時において, Aから甲土地の売却に関する代理権を与えられていた が,Aの代理人としてではなく, Bの名で, 本件売買契約を締結した。
[設問2]甲土地を所有しているAは, Dに甲土地を売却しようと考えている。 しかし, Aは, 長年 甲土地を放置し, 甲土地の隣に住居を構えているEが甲土地を占有していた。 以下の(1)及び(2)の 事実関係の下, 甲土地の所有権の帰属について, DとEの法律関係を論じなさい。 ただし, (1) と (2)はそれぞれ独立したものであり, 相互に関連しないものとする。
(1) Eは,甲土地の所有者は誰かを知らなかったが, 平成4年1月10日に, 平穏公然に甲土地 の占有を開始した。 平成23年1月10日にAはDに甲土地を売却し、その登記もDに移転され たが, Dも甲土地を放置しEの占有は続いた。 その後, 平成25年4月15日, DはEに対して 甲土地の引渡しを要求したが, Eは甲土地の時効取得を主張している。
(2) Eは,甲土地の所有者は誰かを知らなかったが, 平成4年1月10日に, 平穏公然に甲土地 の占有を開始した。 平成25年1月10日にAはDに甲土地を売却し、 その登記もDに移転され たが, Dも甲土地を放置しEの占有は続いた。 その後, 平成25年4月15日, DはEに対して 甲土地の引渡しを要求したが, Eは甲土地の時効取得を主張している。
【2012年】
次の事案において, X社の請求は認められるか論ぜよ。 なお, 解答に当たって, 以下のY社の反論も考慮せよ。
(事案)
X社はA社との間で, A社の土地に建物を建築する旨の請負契約を締結し, X社はその建物を完 成させた。 しかし, A社は請負代金の大部分の支払をしなかったため, X社は, A社と協議の上, 当該建物とその敷地に請負残代金債権を被担保債権とする抵当権を設定すること, 及び当該建物の 賃貸にはX社の承諾が必要であることを内容とする合意をし, その翌月当該抵当権の設定登記が経 由されて(以下,この抵当権を「本件抵当権」という。),X社はA社に当該建物を引き渡した。
ところが, A社は未払の請負代金について弁済を一切せず,またY社との間で, X社の承諾なく 当該建物につき期間を5年とする賃貸借契約を締結し, Y社に当該建物を引き渡した(以下,この 賃貸借契約を「本件賃貸借契約」という。)。 本件賃貸借契約で定められた賃料額は適正な額を大幅に 下回るものであり,また敷金額については賃料額に比して著しく高額で、しかも実際に交付された か否かは定かでない。 なお, A社とY社は一部役員を共通する関係にあった。
その後A社は、銀行取引停止処分を受けて事実上倒産した。X社は,本件抵当権の実行としての 競売を申し立てたが, 売却の見通しが立っていない(なお,このように売却が進まない状況の下で, Y社の元役員でA社の代表取締役Bが, X社に対して,本件抵当権を少額の金銭の支払と引換えに 放棄するよう要求した, との経緯がある。)。 そのためX社は,Y社による占有のためにこのままで は抵当権を実行しても買手がつかないとして, Y社に対して, 抵当権侵害を理由に、 当該建物の自 己への明渡し及び賃料相当額の損害賠償の支払を求めている。
Y社の反論 「抵当権は非占有担保権であるから, 抵当権者であるX社は明渡しを請求することはできない。 また, 抵当権しか有さず占有権原のないX社に, 賃料相当額の損害があったとはいえ ない。」
【2011年】
Xは,Y会社から, 同会社が建築 分譲を行うリゾートマンション(以下「本件マンション」とい う。)の一室(以下「本件不動産」という。)を購入して、 その代金を支払うとともに,その近隣におい て同会社が所有・管理しているスポーツクラブ (以下「本件クラブ」という。)の会員権を購入して、 登録料等を支払った。
本件不動産の売買契約書の記載、 本件クラブの会則の定めによれば, 本件マンションの区分所有 権を買い受けるときは必ず本件クラブに入会しなければならず,これを他に譲渡したときは本件ク ラブの会員たる地位を失うこととされていた。 また, Y会社が本件マンションの区分所有権及び本 件クラブの会員権を販売する際の新聞広告や購入者に渡した案内書等には、 本件クラブが、テニス コート, レストラン等の施設を完備し、 さらに, 四季を通じて利用可能な屋内温水プールが近く完 成予定である旨が明記されていた。
しかし、その後、屋内温水プールの完成予定期日が過ぎ Xや他の購入者らが再三建設を要求し たにも関わらず, Y会社は屋内温水プール建設に着工すらしていない。
このため, XはY会社に対し, 屋内温水プールの完成の遅延を理由として、 本件不動産の売買契 約及び本件クラブの会員権契約を解除し, 売買代金 登録料等の返還を求めようと考えている。 Xの主張が認められるか論ぜよ。
【2010年】
Aは時価 3,000万円相当の別荘(以下「本件不動産」という。)を所有しているが, 管理費がかさむ ため、友人Bに対し日頃から冗談で、 「君に買って欲しいくらいだ」と愚痴をこぼしていた。BはA の発言は冗談であると知っていたが、ある日、 「何なら 3,000万円で買おうか」と冗談を返したとこ ろ, Aは売る気もないのに「売ってやるよ」と冗談に乗ってきた。 これを聞いたBは悪心が働き、た またま別件で預かっていたAの実印等を利用して, Aに黙って諸手続を経て、 本件不動産の所有権 に関する登記名義を自己に移してしまった。
後日, Aはこれに気付いて激怒したが、 特に何か問題が起こるとも考えていなかったこと, また 手続が面倒であったことから登記をB名義にしたまま長期間にわたり放置していた。
その後, Bは, 偶然B名義の登記を見た知人Xから本件不動産を譲って欲しい旨懇請されたため、 本件不動産をAに無断でXに売却して代金を受領し、 そのまま失踪してしまった。 Bは現在も行方 不明である。 なお, XはBから本件不動産を買い受けた際, これがAの所有であることを知らず、 知る余地もなかった。
問 Xは所有権に基づいてAに本件不動産の明渡しを求めるつもりでいるが, かかる請求は認めら れるか。 以下のAの反論を検討の上、 請求の可否について論ぜよ。
Aの反論 「私はBに本件不動産を売る気はなかったのだし, Bだってそれを知っていたのだから、私がBに本件不動産を売ったことにはならないのではないか。 また、 私とBとの間の売買契約がな かったということになれば、Bから本件不動産を購入したというXの主張はそもそも根拠を欠くの ではないか。」
【2009年】
AはBから中古のテレビ甲を購入した。 甲の売買時には、 甲には長時間使用すると映らなくなる
という欠陥があったが, AもBもその欠陥に気づいていなかった。 Aは, 甲を使用して初めてその
欠陥に気がついた。
AはBに対して民法上いかなる主張ができるかについて、 複数の主張を挙げて論ぜよ。
【2008年】
Aは, Bから代理権を授与されていないにもかかわらず, Bの代理人であると称して, Xとの間 でB所有の甲土地の売買契約を締結した場合について,(1)~(3)の問いに答えよ。 ただし,(1)~(3)は, それぞれ独立し, 相互に関連しないものとする。
(1)Xは, A及びBに対し, 民法上どのような請求をすることができるか。
(2)その後, Aが死亡し, BがAを単独で相続した場合, XがBに対し甲土地の引渡しを請求したとき,Xの請求が認められるか論ぜよ。 なお, Bは, Aが死亡する前に、 当該契約に関する意思 表示をしていない。
(3) その後,Bが死亡し, AがBを単独で相続した場合, XがAに対し甲土地の引渡しを請求した とき,Xの請求が認められるか論ぜよ。 なお、Bは, 死亡する前に,当該契約に関する意思表示 をしていない。
【2007年】
本人Aは,土地の購入に係る代理権をBに与え, Bは土地所有者Cと当該土地の売買契約を結した。 その際, (1)~(3)の事情があった場合の法律関係について, 民法上の論点を踏まえつつ,それぞれ答えよ。 なお, (1)~(3)の事情は相互に関連しない。
2
(1) 当該売買契約の締結に際して,CがBを欺罔し, Bが錯誤に陥った結果, BがCと売買契約を締結した場合のAの主張。
(2)当該売買契約の締結に際して, BがCを欺罔し, Cが錯誤に陥った結果, CがBと売買契約を締結した場合のCの主張。
(3) CAを欺罔し, Aが錯誤に陥った結果, 当該欺罔された内容の売買契約をするようにBに指示をして代理権を付与し, Bがその指示に従いつつ, 代理権に基づきCと売買契約を締結し た場合のAの主張。
【2006年】
甲法人の理事Aが, 法人の代表者として,その職務の範囲内に属する行為として取引先の相手方 Bとの間で売買契約を締結したが、 当該契約はAのBに対する詐欺によるものであり, Bは損害を 被った。 また, Aの詐欺がなければBは当該契約を締結することはなかった。 この場合, 次の問いに答えよ。
(1) Bは甲に対して, 民法上どのような請求が可能か。
(2)BはAに対して, 民法上どのような請求が可能か。
(3) 甲がBに対して損害の賠償を行った場合, 甲はAに対して, 民法上どのような請求が可能か。
【2005年】
次の事例を読み, 設問に答えよ。
[事例]
Aは,自己所有の不動産をBに売却する契約を締結したが, 所有権移転登記は経由しなかった。その後、Aは当該不動産をCに譲渡した。Cは,自己に先んじてBが当該不動産を譲り受 けたことを知りながら,Bが登記を欠いていることに乗じて、高額でBに売りつけようとの意 図で当該不動産を譲り受け、 Cへの所有権移転登記を経由したが,Bが当該不動産の買い取りを 拒否したため,CはこれをDに譲渡した。 BもDも、自分が当該不動産の所有者であると主張 している。
設問)
BD間の法律関係について説明せよ。
【2004年】
権利能力なき社団に関し、 1成立要件、 2具体例, 3 資産の帰属, 取引上の債務に対しての構成員の個人責任について説明せよ。
【2003年】
時効制度に関し、 1制度の存在理由, 2 時効中断 (中断事由, 要件 効果, 「停止」 との違いな ど),3時効の援用」の意義について,それぞれ論ぜよ。
【2002年】
民法第177条は、登記がないと物権変動を「第三者」に対抗することができないとしているが、①同条にいう「第三者」とはいかなる範囲の者を意味するか、②同条にいう「第三者」は善意であることを要するかについて論ぜよ。
【2001年】
Aは,自己の所有に係る不動産をBに売却し, BはこれをCに転売した。 しかし,AB間の売買はBの詐欺によるものであったことが判明したため,Aは当該売買契約を取り消した。
(1)この場合において, CはAに対して本件不動産の所有権を主張できるか。
(2)Aが売買契約を取り消した後に,BがCに本件不動産を転売した場合はどうか。
【2000年】
代理制度について、 次の各論点から論ぜよ。
1意義とその法律関係(本人・代理人関係, 代理人 相手方関係)
2表見代理の成立要件
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